突発的に感心が燃え上がり短期集中に調べてみた。*1
直訳すれば女性木材部隊、女性林業戦士と言ったほうが良いかもしれない。
第二次世界大戦中のイギリスで、女性のキコリ集団が組織され、当時まだほとんど人力だった林業労働の最先端で活躍。当時のイギリスの木材生産の6割を支えるほどだったという話。
イギリスは産業革命以後森林は衰退をはじめ、第一次世界大戦中にさらに疲弊し、第二次対戦に入るころにもまだ回復していなかった。そこで、木材は南北米大陸やヨーロッパのからの輸入に依存する状態だった。
ドイツとの戦争が始まると輸入は止まる。しかし戦時特需で木材需要は高まるばかり。働き盛りのキコリたち(Lumberjacks)が戦地に取られてしまったので、労働力不足を補うために組織されたのが、イギリス版の女子挺身隊、ランドコープLandcorp。そのなかでも林業を担うwomens timber corp (WTC)は、
10代を中心に主に都市部からの志願者で構成されていた女性キコリ部隊は、4~6数週間のトレーニングの後、イギリス各地の伐採現場に派遣された。
筋力の平均値では男性より劣ることは確かだが、忍耐力と持続力で次第に力をつけ、伐採作業においては男性と遜色無いレベルに至った女性たちもいたらしい。
搬出は馬が中心だがトラクターも使われはじめた時代。製材は丸鋸による簡易製材が主で、テーブルの上に思い丸太を担ぎあげる作業は極めて重労働。さすがに男女混成チームが組まれていたようだ。
若さ溢れる彼女たちは、次第に山ぐらしに馴染み、はつらつとした笑顔で仕事に取り組む様が記録された写真からも伺える。
WTCが組織されたのは1942年の事。当時としては珍しかったのだろう、英パテニュースがさっそく取り上げた記録映像が今も残っている。
http://www.britishpathe.com/video/women-lumberjacks-issue-title-jolly-good-fellers
私がWTCについて知ったのは、この映像が最初だ。はじめて見たとき、これは銃後の戦意高揚のためのキャンペーンに違いないと思ったものだった。なにしろ斧を振り回すような身体ではないし、動きもぎこちない。着ている衣服もきれいすぎると思ったのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=Eyn9CxXjX7Q
最盛期には同時に6000人、のべ8700人もの女性が林業現場の最先端にいたということは、林業女性史的には画期的な出来事だろう。事故や病気で生命を落とした人もいたらしいが、その数ははっきりとしない。
ネットで読める数少ない同時代資料に、健康状態調査というものがあって、それによると彼女たちは概ね健康で、ただ筋肉や関節を痛めてリューマチ様の症状に苦しむ人も少なくないことが報告されている。
1946年8月WTCは解散され、女王陛下からの感謝状を受け取って女性たちは元の生活へと戻っていった。
おそらく世界最大最強だった女性キコりたちだが、彼女らはその後林業の世界に残って活躍したという情報は無い。戦後平和になった英国社会にとってもしかしたら戦時下の恥ずべき歴史とでも見做されたのだろうか。キコリだった事は英国で女性として生きていく上では決してプラスでは無かったのかもしれない。多くは結婚してカナダに渡ったという情報もみかけた。
WTCの活動はその後長く忘れ去られ、ようやく2000年代になって見直されるようになった。数少ない生存者たちも90代、生の証言を聞くことができる時間は余り残されていない。
http://www.womenstimbercorps.com/
http://www.womenslandarmy.co.uk/world-war-two/the-timber-corps-lumber-jills/
[google serch Womens Timber Corps >https://www.google.co.jp/search?q=Women%27s+Timber+Corps&client=ubuntu&espv=2&biw=1243&bih=705&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwjP1snD34rSAhVKvrwKHWWdAGkQ_AUIBigB&dpr=1.5]]
http://www.thenational.scot/culture/14861327.Meet_the_Lumberjills_women_who_did_vital_forestry_work_during_WWII/
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