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#freeze
*&date(Y-n-j[lL],2023/9/12);
*尖った先端では先に進めない
これは突き掘り型の井戸掘り道具の基本中の基本。
先端が細ければ一突きで突き刺さる力は強く、そのまま突き進むことができそうな気がする。
しかし、実際には一突きで突ききれるような深さでは水脈に達することなど不可能なので、繰り返し何度も突きながら少しずつ掘り進めるのが突き掘りの技だ。
実際の突き掘りは、刺さった切先を抜いては突き直すという動作の繰り返しになる。
そのための絶対条件は、突き掘り具の先端が一番広くなければならないということだ。
鋭利な先端では引き抜くときに大変な力が必要になるし、先端が折れてしまうこともある。
井戸掘りは岩盤をひと突きで突き抜けるのでは無く、水脈に至るまでひたすら突き進むことなので、目的のためにはひたすら繰り返しす突きと引きの動作が必要になってくる。
突き掘る力は道具の質量と速度の積である運動量にほかならないのだが、必要な速度に達するまでには一定の距離が必要になる。その距離がすなわち突き掘りのストロークと呼ばれている。ストロークの長さは上下動をつくり出すシステムの構造によって最適な値が決まってくる。
自由落下のストロークで突き掘りを進めるウインチ掘りに比べて、上総掘りは竹の弾力と撞木を握る人間の力によって重力加速度を超える加速を与えることができるので、特に掘削具の重量が充分に重くできない条件では、圧倒的なパフォーマンスの差が生まれた。
後の時代に竹や人力ではなくスチールワイヤにエンジンとプーリーによってストロークを作り出せるようになってからは、掘削具の質量にスティールワイヤーや天秤と呼ばれる鋼製の梃子までを一つの剛体として動かし運動量を稼ぐ方法もとられるようになる。
こうした運度量を確保するための絶対条件は切っ先が岩盤に打ちあたる瞬間の速度が最大になっていることであり、ストローク中の掘削坑の側壁と掘削具の抵抗はできるだけ少なくなっている必要がある。
このような事情から突き掘り式掘削具の断面を見れば、イチョウの葉や三味線のバチのような先端が最も広い形状になっていたのである。
切っ先が回転し岩盤を削りながら掘り進む場合は必ずしも切っ先が一番太い必要は無い、しかし掘削具と孔壁との摩擦を少なくするためには多くの場合先端側が太い形状になっている。

突いたり引いたりというストローク動作の無い突き進み方の場合は、とにかく鋭利な先端であることが求められる。刃物での切断においても一発で切り抜ける刃はそのような断面になっている。しかし押しと引きを繰り返す鋸の刃の場合は切っ先はアサリと呼ばれ幅を広げて造られている。アサリの無い鋸の場合は刃先が広く刃身全体がテーパー状で背側が一番が薄くなっている。

先端が太い道具で付くと言うとなんとなく鈍器で突き壊しながら進むようなイメージを抱かれるかもしれない。先端が太いからと言ってもなまくらであっては突き進むことはできない。掘削具の先端は鋭利では無いが圧倒的な硬さが必要である。なまくらな先端ではすぐに角が丸まってしまうから、先端が最大であるという条件が維持できず、破壊力が分散してしまう。
先端が太い道具で突くと言うとなんとなく鈍器で突き壊しながら進むようなイメージを抱かれるかもしれない。先端が太いからと言ってもなまくらであっては突き進むことはできない。掘削具の先端は鋭利では無いが圧倒的な硬さが必要である。なまくらな先端ではすぐに角が丸まってしまうから、先端が最大であるという条件が維持できず、破壊力が分散してしまう。
硬いだけでなく繰り返す激しい衝撃にも欠けることのない靭性もまた必須の条件になってくる。
かつての掘削具の先端は毎日のように火造りで角を出し焼入れと焼きなましによって強靭に造られていた。やがでハードフェイス(HF)溶接棒が開発されると先端に硬度の高い材料を塗るという方法に変わるようになる。時代は動力掘りが主流となり人力の技は廃れて行く。
いまさらそのような人力掘削を再現するのは産業考古学的な価値しか無いけれど、物事を進めるときの考え方としては幅広く応用が効くかもしれない。

最先端は尖っていなくても良い。ひと突きで突き破ることができないのなら、むしろ先端は一番幅広いことが重要、ただしその幅広い一番外側のエッジは強靭でなければならない。突きを繰り返して進むためには一定のストロークすなわち引きの幅を持つことが重要である。

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