選木をめぐる具体的なエピソード集

2016/03/01選木より分離
ある選木について、具体的な事例を書いてみる。
荒山林業の施業再開「斧入れ式」2013-12-29でのこと。

私はまだ荒山さんの山で選木をする自身が無い。しかしこれからは私が選んで伐るという立場を受け継がなければならない。
今回は荒山雅行さんの選木した木を伐ったのだが、それでも数本の候補から1本を選びださなければならない。理論と言い訳の間。

一本の杉を選ぶ。

慣れない人力伐倒なので、絶対にかかり木にならない安全な木であること。
そのまま葉枯らしにして春まで放置するので林道に出ないこと。
いま伐るのに相応しい木であること。

荒山林業弟子3人で相談しつつ最後には里利さんの決定をあおいで、決めた一本

凍裂のあるやや繊維の捻じれた木。
木材生産の観点から、これ以上育てるよりも伐採することで周辺の木の成長を促すことができると考えた選択だ。(言い訳的か理論的か)

だが、伐られる杉自身にとってはどうだろう。凍裂を自らの力で修復し傷跡はあっても元気に生育している木だ。

伐る木の周囲の木にとってはどうだろう。この一本がいなくなれば、確かに枝を伸ばす空間が広がることにはなる。

もう少し広く空間を把握して、今後の周辺の木の成長具合から次回の伐採対象木、その次の伐採対象木までを見通す。(単木管理の考え方は、現在の相互影響関係から将来における相互関係までを、それぞれの立木の立場と空間バランス、林分全体の成長と、生産計画などから・・・・・理論としてはそういうことだ)

荒山さんがこの森林で黄色いテープを巻いた木は10数本。いずれも凍裂のある木だ。しかし見渡すと凍裂があっても伐採対象になっていない木もある。

テープを巻いた木を、一時に伐るつもりだったのか、そこには伐る順番を考えていたのか。いまとなっては聴くことができない。

こうしてわからない事だらけのなかで、今回は一本だけ施業再開の儀式として、伐らせていただいた。

荒山さんが、どうするつもりだったのか、答えは出ない。
これからは私が決めなければならない。
それは答えでは無いけれど、言い訳でもない。

冬の間にこの山にかんじきを履いて通うしかないということか。

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