クヌギ †その木は道路からもよく目立つ道の上にあって、元から1mくらいのところから二またに分かれ、根もとの太さは1m、高さ約20mという木だった。
新築した家のすぐ目の前にあって、日あたりと景観を遮るということで、伐ることになった。
樹齢は約50年。気が付かないうちに大きくなってしまい、シロウトの手には負えなくなったという。
一言に50年。この50年の間に人と木のかかわりは大きく変わってしまった。
昔ならクヌギをこんな大木にすることは無かったはずだ。木と人の生活が離れてしまった半世紀を、このクヌギは生き抜いて大木に育ったのだ。
シイタケの原木に使える部分以外、枝先の細い部分と、15cmより太い部分は要らないという。ならやクヌギ細い部分はカマド用の焚き物として火力調節がしやすく、しかも火力があって最高なのだ。太い部分はストーブ用の薪として最高級品になる。
結局太い部分は、八坂の体験館の囲炉裏用にすることにした。クヌギの薪で囲炉裏なんて最高の贅沢だが、スギやマツやケヤキなどを囲炉裏で焚くのは情けない。現代の体験館なのだから本当の贅沢な焚き物を用意するのも良い。
太い方の幹に登って枝をチェーンソーで落とす。ハスクバーナ338XPはこういう仕事に最適なチェーンソーだ。
私は木登りにはアルミ製のステップの使っている。安定した足場を自由につくれるのが良いところだし、材を痛めないので将来まで残す木には最適だが、全部倒してしまう木の場合は昇柱機の方が楽かもしれない。
一番上まで落とさなくても安全に伐倒できるので15mまでにした。それ以上登るのは寒空の下では堪える。
枝を落として空間を明けたところへ、まず細い方の幹を倒しこむ。い幹の上に滑車をつけてチルホールをゆっくり戻しながらという吊し伐り。細いと言っても直径40cm高さ20mのクヌギは並大抵の重さではなく、チルホールの限界ギリギリの作業に。相当な重労働になってしまった。これはチルを2台つかえば楽だったのだ。木の重さの感覚は一応わかっているはずなのだが、ときどき無理をかけてしまうことがある。
残りの太い幹は一発伐倒。倒す方向の許容範囲は5度くらいはあったのだが、後の作業のことよりも安全を重視する側に寄せて倒した。間違い無くできるという自信はあっても、毎回緊張する場面。特にこの木の場合崖っぷちだったので足場がほとんど無い状況ということもあり、追い口伐りは変則的な方法になった。
あとここを切れば倒れるというときになって通行車両が。一瞬迷ったが通すことにした。無風だったし枝を落として重心が下がっているので、クサビを打ち込んでも倒れないかもしれない木だったからだ。倒してしまえば最低でも15分は車は通れない。
最後の一切りでツルの幅を5cm程にまで追い込んでようやく木は倒れた。ちゃんと教科書通りではないか。怖がってツルを太く残してクサビ打ちに体力を使っても、なかなか倒れず、最悪受け口側から切り足すような事もあるのだから。(もちろん偏心木ではこうは行かない、太い木の場合ジャッキを使うこともあるらしい)
重機が無いので後の処理が大変だった。久々の重量級の伐採で心地よい疲れが残った。
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