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「林業は資金が必要なら木を伐り出して売れば良いのだから、運転資金の融資対象にはならない」と言われて某政府系金融機関に門前払いされたのはいまから10数年前のこと。
「伐り出して売る」という部分だけを切り離して「林業」を考える事自体がおかしいのだが、あきらかに主な収入源は木材の販売なのだから、かつてこの金融機関の人が言ったことは正しい。
問題は木材の生産以外の森林づくりという行為を、どのようにして支えるかということになる。
これは、本質的な林業ではないので、林業経営のなかで解決することはできない。ただ森林の公益性のために、公共事業として整備が行われるのだ。
さて問題の運転資金の枯渇は、補助金の支払い遅れが最大の直積的な原因であった。木を伐り出して売るという林業からは切り離された、公共事業としての森林整備を、事業終了後に実績で補助されるという事業における問題だ。
そもそも資金計画が甘かったと言えないこともない、自分の所有林でない森林を、森林所有者と契約したうえで間伐などの整備を行い、補助金申請をして収入にする。本来なら森林所有者の利益になることでもあり、補助金の申請は森林所有者の仕事だったはずだ。事業者がその事務手続きを代行することがあるとは言え、整備事業にかかった費用自体は、受益者である森林所有者が事業者に支払うのであって、補助金はその後に補填されるのだ。
ところが、ずいぶん以前から、森林整備の補助金は森林所有者にかわって事業を実施した事業者に支払われるようになってきた。いまでは森林経営計画の認定を受けた者でなければ補助事業の事業主体になれないので、森林所有者が補助金事業を実施することは少なくなっている。
どんな事業でも事業を実施するには資金が必要なことは言うまでもないが、多くの森林整備事業が、事後に支払われる補助金に依存している。事業が完了し補助金を申請、検査に合格してはじめて収入になる。それまでの事業費をどのようにまかなえばいいのか。ふつうの事業を実施する前から準備しておくのが当然なのだが、森林整備事業の世界では、それまでの資金不足を自腹でなんとか凌ぐという癖がついているのだ。
自己資金が無い者でも経営ができるというのが資本主義。
補助金は公共的な投資。公益的な目的のための公共事業という側面もあるが、資本主義の原理に基づいた投資として投資効果を求められるようになってきた。最近の傾向では木材が出ないところには補助金は出さないのが原則らしい。
私の地元では、補助金を単なる事業資金として使い潰し、木材生産という結果が出ないばかりか、詐欺まで横行するに至り、まったく公益に反するということで、完全に信用失墜。補助金予算配分は半減となった。
いままでも計画的に補助金依存率は下げてきたけれど、木材の売上だけで経営を維持するには至っていない。生産性の向上と販売価格の上昇、どちらもまだ充分な成果が出ていない。
それはやらないというのが経営方針。
これからは、一般市場からの投資に期待するしかない。
森林は生物なので、正しく扱えば空気と水と太陽だけで確実に成長し蓄積が増える。人間が手を加えることで、森林の価値を幾分か人間の都合に合わせたかたちに変えて、分け前をいただく。
森林の中では森林の生物と、誠実なきこりたちが、常にベストを尽くして働いている。しかし、きこりは人間なので森林の中では生きていけない。
課題は森林の入り口と出口。
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