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2 (2013-04-30(火) 07:55:41)
#freeze
労働の対価として賃金を受け取るのが、現代社会における労働の標準的なかたちとみなされているかもしれない。

しかし、労働によって生み出した価値を貨幣に換算しなければならないというのは、おかしな話である。

山から木を伐り出して薪をつくり暖を取る、という行為によって、貨幣など通さなくても、直接労働の成果を享受できることは誰でも理解できるはずだ。

もちろん、薪で暖を取るために、薪を買う事もできる。しかし薪を買うためには現金が必要なので、何らかの方法で現金を手に入れなければならない。

現金を手に入れるためにする労働、すなわち賃金を得るための労働が、賃労働である。

1トンの乾燥していない薪をつくるために、木を伐り出して家まで運ぶのに、半日かかったとする。チェーンソーを動かして混合ガソリンとチェーンオイルを使い、小型クローラー運搬車と軽トラック使った。労働はともかく機械の消耗や燃料は金銭に換算される。
(もちろん手鋸や修羅、馬などの力で運び出すこともできるわけだが、ここではより一般的な方法で考えることにしよう。)
半日(4時間)の労働を金銭に換算するべきかどうか、換算するとしたら何を基準にしていくらにすべきなのかということが問題になる。

仮にこれらの全てを金銭で換算し費用を見積もったとする。

労働については、私の普段の仕事の日当の半日分ということにする。

結果は概算で1万円を軽く超える。

ところで、1トンの薪原木は約1万円で買うことができる。ただし運賃は距離によって異なる。そこで伐採業者の現場まで自分の軽トラックで取りに行くことにする。
運搬にかかる時間(自分の労働時間)と軽トラの燃料代・消耗費を計算すると、自分で伐り出した場合とそれほど変わらない金額になる。


ひと冬過ごすために必要な薪原木は約4トンだ。

4トン分の木を伐り出すのはかなり大変だ。買ったほうが楽かもしれない。

伐採業者の薪原木が1トン1万円なのは、伐り出すためにかかった労賃と労働者の福利厚生費用、会社の管理費などをの合計から換算された金額だ。

ただし伐採業者は一社だけではないから、他の業者との競合関係があり、価格についても相場というものが生まれるので、簡単にかかった費用だけで価格が決まるわけではない。


薪原木1トンを運び出すのに、管理費や福利厚生費のいらない私の労力から金額に換算したものとそれほど変わらないのは、その会社の伐採師の賃金が安いからだけではない。実はこの山から伐り出す仕事には間伐の補助金が入っているのだ。

補助金とは税金が財源になっているのだから、私も幾らかは負担しているはずだ。

さて、これらの前提条件のもとで、薪の原木を自分で伐り出すことと、業者から買うことの違い、どちらが、どのくらい、誰を豊かにすることが出来るかという事についての考察を進めることにしたい。








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