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2 (2017-02-08(水) 22:01:57)
#freeze

https://www.facebook.com/yunikayama/posts/10212168077386991


林業や木材の事を研究しようとしたら、とりあえず生態系や人間社会についての研究とつながらなければ、面白みが無いし、成果を活かしにくいと思う。

カラマツを植えて育てて使うということは、きわめて林業的で林学的で木材学的で、およそ自然ではなく、かと言って不自然でもない。

そんな事を妄想する。

カラマツを植えるということは、ほぼ確実にいままでカラマツの居なかった森林にカラマツを連れてくるということ。
なぜならカラマツの天然林というのは極めて限られた場所にしか存在せず、木材生産を目的とした造林はこうした天然カラマツ林とはかなり条件の違う場所で行われることがほとんどだからだ。
もちろん、いまではカラマツの造林地で主伐跡にカラマツが再造林されることも多くなっている。しかし、造林地はカラマツの現生地とは異なる生態環境であることにはかわりなし。

カラマツに限ったことではないが、まとまった面積に人工的な造林を行うと植えた樹と共生する生物と競争する生物が、一斉に動き始める。
土壌微生物の働きが無ければほとんどの樹木は生存して行けない。カラマツは菌根菌であるハナイグチなどと共生関係をつくる。これらの菌類はカラマツがいなくても多くの土壌中にそれなりに存在しているので、カラマツが植えられるとそこに集まり数を増やしなが、カラマツの生育を助ける。
(このようなストーリーをわずかな予備知識で描くことはできるが、厳密な研究課題として、カラマツ造林地における土壌微生物群の変化のような研究が進められてば、さらに見落とされている多くの事が解明されるに違いない)


一般に林業で人工造林を行うときには、目的は単純に木材生産である。だから造林技術者や林業家は「雑草木を刈りはらわないとカラマツ林が成立しない」くらいの事しか考えない。そこで植付密度をどのくらいにしたら、下刈回数がどのくらいで済むのか、という事を研究する。

通常の造林の発想では伐期までの総支出と総収入を比較してプラスにならなければ人工造林は意味が無いはずで、そのような収支を考えて、造林や保育の手順を考える。いまや低コスト造林は流行の研究テーマだ。

しかし、森林の価値は木材生産だけにあるわけではない、カラマツが森林にもたらす価値を生態学的に評価し、単位主目的樹種であるカラマツだけでカラマツを林を考えるのは、木を見て森を見ずというものだ。
たとえば下刈りや除伐という保育施業において、刈られる雑草木にも価値がある可能性は否定できない。生態系サービスという価値を考えなくても、現に木質材料として、たんなるマスで無い価値があるという実例もある。だから除伐で収益が得られるというモデルも考えられるのだ。

カラマツは生育初期の15年~20年くらい(本当は年数でじゃなくてカラマツ自身の何か生理的な事情がありそうだけど)は、材のネジレが強い。そこで若い頃はあまり太らないようにして、成熟材ができる頃からはどんどん太らせれば、使いやすい材が採れる。
こんな都合の良い育林が技術的に可能なのかどうか、実証実験には長い時間がかかるので、なかなか取り組めない。
だいたいにおいてその木材が使いやすいかどうかというのは、使う人が決めることであって、カラマツ自身には無関係だし、林業家の考えかたに従うわけでもない。


ネジレとか脂はカラマツにとっては何らかの意味があるわけだし、使う側にとっても意味がある。
(例えば杭丸太を使う人にとっては繊維がネジレていることはメリットかもしれない・・誰か調べてないか?)
木材の事を考えていると、良いものがたくさん出来ればということばかり求めてしまうけれど、使う人にとっては、何が良いものなのか、どんなものがどのくらい要るのか、あまり考えない。
例えばカラマツ材が美しいと言うけれど、スギもヒノキも、もちろん美しい。カラマツ材の美しさを活かすためには、乾燥技術だけでなくてデザインも重要だ。それもスギやヒノキとは違うデザイン。カラマツ材の利用の歴史は浅いから伝統の中からは良いモデルは見つからないかもしれない。
よくカラマツ林は美しいと言われるけれど、林内に入って美しいカラマツ林なんてほとんど無い。どうしたら林内も美しい、仕事をしても散歩をしても楽しいカラマツ林ができるのか(そういうカラマツ林は実在している)研究してみたい人もいるはず。
そんな感じで、林学や木材学だけでなくて、とりあえず隣接するあらゆる領域、そして思いもつかない離れたところまで、いろいろひっくるめて、カラマツ学を(もっと言えば森林木材学なんだが)妄想してみたら、面白くなってきた。
公的予算はつかなそうだけど、民間のスポンサーとかクラウドファンディング、もちろん趣味なんだから手弁当が基本だけれど。
そうとうディープに楽しくいろいろやってようやく、カラマツを直接食べられない人間がカラマツで食っていくという夢が実現できるかもしれない。

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