私は「世界」に関心を持っている。「世界」への入り口は山と自分自身だ。山とは何か私は何者なのか。山は、地殻変動の積み重ねでかたち造られた大地の上に、様々な生き物たちの長い年月の活動の成果である、生態系が重なったものだ。
そこに最近になって加わった人間も、含まれている。

私が暮らす地域の山は、日本列島形成史でも際立った場所にある。
フォッサマグナの西の端に位置し、飛騨山脈の造山運動の過程で隆起した花崗岩の岩塊の縁に沿う糸魚川静岡構造線、その周辺に噴出した火山からの幾多の体積物を、フォッサマグナの海底堆積物が持ち上げつつある。

こうして形成されつつある大地の起伏に対して、生物が東西南北の方向から侵入し棲息領域を拡大してきた。

大地の結節点である複雑な地形は、交錯した大気の運動を導き、複雑な生態系を築きあげる。日本海と太平洋、西の山岳と東の低山の間にあって、海面から500m以上も上がった大地の上で、気候変動の波に洗われながら、どことも断然しない連続性の中にこの地の生態系は存在してきた。

そこに人類は1万数千年前から参画して来た。ことに最近の千年ほどの間に大地を刻み木々を伐り出し安定した生活圏を獲得している。

人がこの地を耕しはじめてから千年余、その歴史の末に、日々の糧を得る以上に、山に入り木を伐り出し、組織的に木を植える、造林の営みが始まったのは最近百年ほどのことでしかない。

百年と言えば人間三代、この地に造林を試みた人たちは、それぞれの家族においては、いわゆるご「先祖様」ではなく、名前が直接記憶されている父母から曽祖父母世代である。

ほとんどの造林地は、昭和の戦争が終わった後、最近60年以内につくられたもので、現代の出来事と言って良い。

そこに20年ほど前に移り住んできたのが

世界に関心を持ち、自らに関心を持っている、香山由人だ。

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