状況判断

森林の施業の方針をたてるにあたって、とりあえず私たちのような、所有者でない立場としては、最初からの考え方というものを、そもそも知ることができない場合がほとんどだ。

全ては現状からはじまる。それも、多くの場合、思い通りには行かなかったという状況なのだ。

現状とは過去の累積。過去の計画の誤りもあるかもしれないし、状況の変化もあるだろうし、なによりも計画どおりに出来なかったという現実がある。

そこを、どのように受け止めて、これからにつなげるかが課題なのだ。

ほとんどの場合、間伐が大幅に遅れた状態の山に接する事が多い。そこで、大抵の選択は、強度間伐、長伐期、大径木生産というところに落ち着く。

鋸谷式にしても、保残木マーク法にしても、まして列状間伐も、おおよそ当初の見込みどおりに行かなくなっている、林業の現状に対する、現時点のでの対応策なのだ。

強度間伐、大径木生産は、理屈にも合っているし、何よりもトータルのコストを下げるという意味がある。しかし、現場の施業自体は、案外単純なものになる。

ところが、この現場はちょっと違うのだ。

古典的な優良材生産を目指して、密度管理による肥大成長の管理と、枝打ちをしないで自然落枝を狙ってきたという実に微妙な施業をしてきた山。樹齢も24年と若い。

前回の間伐は3年前。その時点でたぶん2~3年程度、計画の遅れがあったようだが、間伐率が部分的にちょっと足りなかった。

切り足りない分を手直しをしようと思いつつ、3年たってしまった。

普通なら、次に補助金が使える時期、つまりもう2年おいてから、間伐をするということになるのだが、この山主さんとしては、現状での微妙な施業の遅れが気に入らない。

そこで、補助金と関係なく、今の時点で良い状態に手直ししてほしいということになった。

本当は、去年たのまれていたのだが、ついつい補助金が使えるまで待った方が良いのでは?などという勝手な思いこみもあって、1年おくらせてしまった。

3年前の切り足りなさを補いつつ、3年分の成長を考慮し、さらに数年後にもう一度間伐をすることを想定しながら、林分内の微妙な成長のばらつき、形質の善し悪しなどを考える。

古典的な、優良材生産はまだ可能なレベル。あと10年で、柱材は確実にとれる。

お金の問題で言えば、柱材林業なんてやめて、強度間伐をして大径材を目指すというやり方もアリだけれど。ここは、あえて優良な柱材を次の次の間伐でとることを意識してみる。

標準伐期で皆伐するということは、たぶん無いと想定して、最終間伐を60年あたりにもっていった100年以上伐期の大径材生産の可能性も考慮することに。

成長力が非常に旺盛な現時点で、そんな遠い未来のことを予測するのは不可能に近いけれど、傾斜や土壌の条件も考慮して、大径木にできる木か、柱で伐る木かといあたりも、だいたい見当をつけてみようというのだ。

このあたりが、いわば今ここで私がこの山にかかわるポイントのようなものだ。

実に難しい。とりあえず一巡り伐採してみたら、伐採率は8%くらいだった。

補助金は関係ないので、これで止めても良いのだが。もう少し切るべきか。

次は補助金を使って最低20%切ることを想定。明日もう一度あるくことにする。

次が何年後かということもそこでおおよそ決める。

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